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貧困に貧困は救えない。

貧しき人々

 身もふたもないタイトルになってしまいましたが、真実ですね。

 なにも同じ状況にある者同士の助け合いをディスっているわけではありません。

 同じ状況にある者には共感を覚え、身を寄せ合いたくなるのが人の心情だと思います。

 苦しい状況下にある二人が互いの幸せを願って励ましあう小説が『貧しい人々』です。

POINT

1.「おじさん」と「女の子」の手紙のやり取り

2.貧乏人同士の助け合いは救いにならない

3.思いやる心は必ずしも相手のためにならない

"天才"ドストエフスキーの処女作『貧しい人々』

 著 フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
 訳 安岡 治子

 光文社 初版2010年4月20日

 

名前は知ってるけど、本は読んだことない。

 ドストエフスキーについてそう語る人は多いと思います。

 ”天才”ドストエフスキーデビュー作でありながら世間では大絶賛された中編小説で、第三者視点ではなく「往復書簡形式」という、簡単に言い換えれば”手紙のやり取り”の内容がそのまま小説となっています。

 手紙の内容ですので、文字で表現してある分、心理描写なども捉えやすく、深く読める内容となっています。

「おじさん」と「病弱な少女」の文通

 はっきり登場人物として認識できるのはたった2人です。

 役所で働く貧しい下級役人のマカール・ジェーヴシキンと、貧しいうえに病弱な少女ワルワーラ・ドブロショロワ(愛称ワーレンカ)。

 2人の間で手紙のやり取りが行われているわけですが、47歳ぐらいのマカールに対して、10代と思しき少女のワルワーラの関係は普通に考えれば謎ですね。

 マカールの手紙には「私の天使」のような表現でワルワーラへの愛情を示す様子から、危険なおじさん臭がします。

 しかしワルワーラもおじさんを慕い、体調などを心配する様子がよくわかるように、相思相愛であるといえます。

 ただ、恋愛対象というよりは、とにかくお互いを助けて幸せになってほしいという慈愛の精神という感じです。

 何故文通をしているのかは言及されていません。

 しかも、中庭を隔てた向かいの建物に住んでいるような描写があるので会えない距離に住んでいるというわけではありませんし、「夕方のミサ」やお互いに本を届けたりと、割と会っている描写も見られます。

 「貧しい人々」のタイトルの通り、ほぼ貧しい人しか登場しません。


 登場といっても手紙の中のエピソードとしてですが、時代背景もあってか貧しいのレベルが違います。

 ちょっと面白い部分として、マカールの靴がボロボロすぎて、底が取れてしまい、もはや何を履いているのかわからん的なことを言っているところがあります。

 そして、お互いに、また手紙のエピソードに出てくる人物たちも、貧しい人々の間で助け合い励ましあいしているわけですが、正直誰も幸せになれていないお話です。

 貧しい人が貧しい人に助けを求めたところで問題解決にはなりませんもんね。

まとめです

 安岡治子さんの訳がすばらしいのか、とても読みやすい小説です。

ドストエフスキーの小説は長く内容が複雑で難しいという印象が強い、いわゆる「5大長編」を想像しますが、「貧しい人々」は300ページほどで、しかも難しい予備知識もいらず、本当に2人の手紙のやり取りなので読みやすいと言われています。

 

実際、苦も無く読めました。

 マカールの願いは、

名前は知ってるけど、本は読んだことない。

とにかくワルワーラが幸せに暮らせること。

 そんなワルワーラが近くにいることがマカール自身の幸せであり、いつまでも幸せを感じて生きていたいという願望を、自分の身を削ってまで実現させようと必死に貧困の中でもがいているおじさんの姿は正直滑稽ながらも、愛する者のためにここまでするのかと感嘆させられる部分もあります。

 ただ、表現の中で拗らせすぎて、もはや愛する人への言葉なのか疑問な部分もありますが…。

 もしドストエフスキーの名前の前に二の足を踏んでいる人がいるなら、ぜひこの本を手に取って読んでみて、

名前は知ってるけど、本は読んだことない。

ドストエフスキー読んでるよ」という実績作りの一つにしてはいかがかと思います。そういった意味では最適な1冊です。